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腸内環境改善

こんな病気

腸内環境とは、腸のなかの細菌を含めた、腸内全体のことを表します。
人の腸には、体内に住む細菌の９割にあたる1000種類・100兆個もの細菌が住んでいるといわれます。細菌は種類や性質によって集まり、腸の中で生態系を作り、毎日活動しています。その様子が品種ごとに並んだ「お花畑（Flora）」に似ていることから「腸内フローラ」とも呼ばれることもあります。正式名称は「腸内細菌叢（ちょうないさいきんそう）」です。

種類

代表的な腸内細菌は作用によって3種類に分類されます。
善玉菌：消化吸収の補助や免疫刺激など、健康維持や老化防止などへ影響がある菌で、代表的な菌にはビフィズス菌や乳酸菌があります。
悪玉菌：からだに悪い影響を及ぼすとされ、代表的な菌にはウェルシュ菌・ブドウ球菌・大腸菌の有毒株があります。
日和見菌：健康なときはおとなしくしているが、からだが弱ったりすると腸内で悪い働きをする（日和見菌感染症の発症）菌で、代表的なものにバクテロイデス・大腸菌（無毒株）・連鎖球菌があります。

原因

◆腸内環境が乱れる理由
①食事
肉類中心の食生活に変わると、脂質や動物性たんぱく質を好む悪玉菌が増え、腸内フローラのバランスが崩れてしまいます。

②加齢
赤ちゃんの『腸内フローラ』はビフィズス菌などの善玉菌が多い状態ですが、成長するにつれて腸内は変化し、善玉菌と悪玉菌のバランスのとれた『腸内フローラ』になります。さらに老年期に入るとビフィズス菌が減り、ウェルシュ菌などの悪玉菌が急激に増加し、腸内環境が悪化してしまいます。

③抗生物質などの薬
抗生物質は、病原菌だけでなく、他の害のない菌まで影響を及ぼすことがあります。その結果、腸内の善玉菌が減って腸内環境が乱れることに。病院で抗生物質が処方される際、「整腸剤」が併せて処方されることがあるのはそのためです。

④ストレス
腸には消化管の機能を調整する複雑な神経系があることが知られています。腸と神経は密接な関係にあるため、精神的なストレスによって腸内環境が乱れ、下痢や便秘といった症状を起こしやすくなるのです。特に、過敏性腸症候群(IBS)はストレスが関係し、慢性的な下痢や便秘を引き起こします。

症状

腸内環境の悪化によってまず現れるのはお腹の不調です。大腸で便が滞って便秘になったり、悪玉菌の作り出す有害物質を排出しようと、ぜん動運動が活発になりすぎで水っぽい便がでることがあります。
腸内環境の乱れが続くと、悪玉菌の作り出す有害物質が腸の粘膜を通して全身にまわり、やがて皮膚から出てくるため、肌あれの原因になります。
また、腸内環境が悪いと免疫力も低下します。体にとって外的である細菌やウイルスは口や鼻が侵入経路。ほとんどが胃の酸で死滅しますが、一部は小腸まで侵入します。
小腸の腸壁には、パイエル板という、体にとっていい細菌かどうかを判断する免疫細胞が集まる器官がありますが、腸内環境が悪く小腸の働きが低下すると、パイエル板がよく機能せず免疫力が下がってしまいます。

診断

便の状態で、腸内環境が乱れていないかチェックしましょう。
①硬さ：理想的なのは柔らかいソーセージのような滑らかな便です。硬くてコロコロしていたり、泥状・液体状の場合は腸内環境が乱れているかもしれません。
②色：茶色～黄土色が健康的な便です。下記のような場合は注意しましょう。
　濃い褐色：便秘、肉類の食べ過ぎ、ココアやチョコレートの食べ過ぎ
　緑色：消化不良、急性腸炎、クロロフィルを含む食品（緑黄色野菜など）
　赤褐色：大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室炎、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病など
　鮮やかな赤色：いぼ痔、切れ痔、肛門裂傷
　灰白色：肝臓疾患、腸結核、すい臓疾患（バリウム検査後は問題ありません）
③臭い：腸内環境が整っていれば、便の臭いはそれほどきつくありません。悪玉菌が増えると臭いがきつくなります。
④便通の頻度：週に3回以上、定期的にお通じがあれば腸内環境は良好。ただし、定期的にお通じがあっても「強くいきまないと出ない」「便が残っている感じがある」という場合は、腸内環境が悪化している可能性があります。
⑤水に浮くか：健康な便は水に浮きます。食物繊維を多く摂ると、腸内のガスを抱え込んだような便になるため、密度が少なくなり水に浮きます。食物繊維量が少ないと便は水に沈んでしまいます。

治療の流れ

腸内環境を整えるには
①食事
腸内環境を整えるには、食物繊維や乳酸菌、オリゴ糖が含まれた食品がおすすめです。
・発酵食品
ヨーグルトやキムチ、納豆、味噌などは腸内環境を整える有用菌が豊富です。

・海藻類
食物繊維が豊富です。水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」を両方含んでいます。水溶性食物繊維は、大腸のビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌のエサになる他、ミネラルの吸収をよくしたり、食物の消化吸収を穏やかにする作用があります。不溶性食物繊維は、便を送り出す腸のぜん動運動を促す作用のほか、便の量を増やす作用も持っています。
便秘の場合、不溶性食物繊維だけを摂ると、逆に悪化する場合があり、水溶性食物繊維だけ摂ると下痢をする場合がありますが、海藻は２種類の食物繊維を含んでいるので、腸内環境を整えるのに最適です。

・キャベツ、玉ねぎ、ごぼう、リンゴ、バナナ、大豆製品など
　善玉菌のエサになるオリゴ糖や食物繊維が豊富です。

②運動
適度な運動は、全身の血流をよくし、自律神経のバランスを整え、腸内環境を整える作用があります。散歩やストレッチなどの軽めの運動のほか、お腹に刺激を与えるために腹筋を鍛えるのもおすすめです。

③ストレス解消
脳と腸は、互いに影響し合う関係であることがわかっており、これを「脳腸相関」といいます。緊張やストレスでお腹の調子が悪いのは、脳と腸が深く関わっているからです。寝不足や運動不足でストレスがたまっていませんか？

生活習慣チェック

当てはまる人は腸内環境に注意！
□お肉が好きでよく食べる
□お菓子やスイーツをよく食べる
□野菜やきのこ類、海藻類をあまり食べない
□インスタントやレトルト食品をよく食べる
□満腹になるまでどか食いをしがち
□生活習慣が不規則である
□睡眠時間が６時間以下、または不十分と感じる
□運動が嫌い、運動しない
□まじめで几帳面と人からよく言われる

ご存じですか？

通勤中、電車や車の中で急におなかが痛くなる。会議や試験の前になるとどうもおなかの調子が乱れがち…こんなことはありませんか？もしかしたら「過敏性腸症候群」かもしれません。過敏性腸症候群は、腸に原因となる異常が見当たらないのに、腹痛や腹部の不快感、下痢、便秘といった便通異常が起こることが特徴です。原因は複数あると考えられ、はっきりとは解明されていませんが、最近の研究から「腸内細菌」が誘因であることがわかってきました。
過敏性腸症候群の人は、そうでない人と比べて腸を拡張する刺激に対して敏感に反応します。その原因のひとつとして、腸内細菌のバランスが崩れることによって悪玉菌が増え、腹痛や腹部の不快感といった知覚過敏が起きやすいということがわかってきたのです。規則正しい生活、食事、運動などで、腸内環境を整えるようにしましょう。